本インタビューについて
現在、ドイツ2部のクラブでプレーしている 井上 愛さんとの対談です。海外挑戦をサポートしているエージェントはWorld Football Connectionさんです。(以下、敬称略)
プロフィール紹介
◯名前:井上 愛(Ai Inoue)
◯出身:東京都八王子市
◯所属クラブ:
→八王子CBX FC
→スフィーダ世田谷FCユース
→筑波大学
→つくばFCレディース
→FC町田ゼルビアレディース
→Southern New Hampshire University(アメリカ)
→FC町田ゼルビアレディース
→SC Dortelweil(ドイツ3部)
→Eintracht Frankfurt Ⅱ(ドイツ2部)
Q. 井上選手のサッカー歴を教えてください
井上:小学校4年生の時にサッカーを始めて、大学まで日本でサッカーをしていました。大学を卒業後にアメリカの大学院に行ってその大学の部活でプレー。その後一旦日本に帰った時期があったんですけど、その時期を挟んで2024年の3月からドイツに来ました。
3月から5月のシーズン後期だけ最初のチームでプレーをして、2024年7月からまた新たなチームでプレーという感じです。
サルウェブ:そもそもサッカー始めたきっかけは何かありますか?
井上:家族の影響ですかね。家族が割とみんなスポーツが好きで、父と母がフットサル、兄がサッカー、姉がバスケをやっていて。私も最初は姉の影響でバスケやってたんですけど、公園で父とサッカーして遊んでたらセンスあるじゃん!みたいな感じになって。調子に乗って始めました(笑)
サルウェブ:どういったきっかけで海外でプレーすることを意識し始めましたか?
井上:最初は全然興味なかったんですけど、大学時代に、現地の大学生と試合ができたり、観光も回れたりする”女子サッカーアメリカツアー”みたいな企画があって。当時はサッカーをしたいというより、アメリカに行くこと自体に興味があったので遊び気分で行ったんです。その時に、サッカーを使って海外に行くっていう選択肢があるんだっていう風に自分の中で気づいて。それもいいなって思ったのがきっかけですね。
サルウェブ:なるほど。ではそこまでは、日本国内でできる限りサッカーを続けたいなと思っていたのでしょうか?
井上:そうですね。サッカー自体はプロを目指してやってきたとかそういうわけじゃなかったんです。ただ楽しくて続けていて、大学に入る時も、別に辞めてもいいかなぐらいな感じで。(大学に)部活がたまたまあったから入ったし、大学卒業後も別に辞めてもいいなって思ってたんです。
でもそのアメリカツアーをきっかけに、海外に行きたいっていう気持ちが芽生えて、それを叶える手段としてサッカーを使うっていうのが自分の道を広げる選択肢になるなと思って(サッカーを)続けてきました。
言葉を選ばずに言えば、ずっと上を目指してたわけじゃないっていうのが本当のところで。まあ今はまた状況は変わってきてますけど。楽しいから、ただただ続けてきたっていう感じですね(笑)
サルウェブ:それがかえって良かったのかもしれないですよね。海外に目を向け始めてから、まず最初にアメリカの大学院に行かれたとのことでしたが、ここには何かきっかけはありましたか?
井上:たまたま私の筑波大の先輩が卒業してからアメリカの大学院に行っていて。その人の影響もありましたね。それこそ別に大学院に行きたかったわけじゃなくて、アメリカにただただ行きたくて。せっかくなら学位取ろうかなっていう感じで大学院に進みました。
サルウェブ:アメリカの大学院に進むというのは結構難しいものではないですか?井上さんの場合はサッカー推薦のような形で進学されたのでしょうか?
井上:レベルで言ったら多分ピンキリだと思うんですけど、学力そのものっていうよりも、英語(語学)だと思うので、英語さえできて大学のレベルを選ばなければ入れるのではないかと。
私の場合は現地のコーチにTOEFLの点数これだけ取ってきてねって言われて、その基準を達成すれば奨学金を得られて入学できるという感じでした。サッカー推薦のような形ですね。
しんどい準備期間を経て叶えた渡米
サルウェブ:ちなみに英語はかなり準備されましたか?
井上:英語はかなり自信を持って勉強したって言えると思います(笑)
サルウェブ:すごく努力されたんですね。いつ頃から準備されたんですか?
井上:これ全然参考にならないんですけど(笑)準備するのが遅くて(笑)本当は大学4年で卒業して次の9月から行きたかったんです。でもちゃんと英語の勉強が全然できてなくて、一回先延ばしにしてるんですよ。
なので、ちゃんと勉強し始めたのは(大学を)卒業してから って感じですかね。
サルウェブ:その頃のプレー環境はどうされていたのでしょうか?
井上:その時はつくばFCでプレーさせてもらっていました。ただ、その年でアメリカに行くつもりだったんですけど、ギリギリまで粘った結果どうしてもダメっていう話で。なのでそのタイミング(8~9月頃)でつくばFCをやめて一度サッカーから離れたんです。
その時期に自分の中で英語の勉強に集中して取り組んで、TOEFLの点数を取りました。そうしていざアメリカに行けるってなったタイミングで町田ゼルビアに入り直したという感じですね。
その時期は精神的にも結構不安でした。周りのみんなは大学新卒で就職とかしてるので、自分だけフリーターというか。周りには別に大学院で浪人してるって思えばいいじゃんみたいに言われたりもしたんですけど、自分の中ではそれなりに不安とかもありましたし。そういうしんどい時期でしたが、なんとか無事乗り越えました。
サルウェブ:ちなみに英語の勉強はどのように取り組まれていましたか?
井上:もちろん(英語を)喋れるようになりたいという気持ちもありましたけど、私の場合まずはTOFLEの点数を取らなきゃいけなかったので、とにかくTOFLEの問題をやったり単語やったりという感じですかね。
サルウェブ:ありがとうございます。大学院への挑戦は、サッカーを続けながら勉強もできるという点からしてもすごく良い選択肢ですね。
井上:そうですね。アメリカの大学ってやっぱり入学するのにお金がかかるんですけど、スポーツで行って奨学金がもらえればその分費用は抑えられると思うので、一つの選択肢として良いと思います。
私の場合、スカラーシップで学費が全額免除だったので、ほとんど費用がかからずに行けました。このあたりは大学の規模や選手によって違ってくる部分ですね。
サルウェブ:大学院には何年間通われましたか?
井上:ちょっと複雑なんですけど(笑)日本の大学を卒業して2年目で英語力的に入学できる状況だったんです。ですが、ちょうどコロナの時期と重なってしまって渡米ができず、入学が更に1年先延ばしになったんですよね。
大学卒業後2年目で入学はできたものの、(コロナの影響で)オンラインで授業を受けてました。
なので、大学院に所属していた期間としては 2年半なんですけど、実際に渡米していた時期は1年半って感じです。その時も結構しんどかったですね。
Q.ドイツへ挑戦するまでの経緯を教えてください
サルウェブ:アメリカの大学院を卒業後日本に戻ってからどれくらいでドイツへ渡航を決められたのでしょうか?
井上:ちょうど1年間ぐらいですね。元々アメリカにいた時からどこかのタイミングでヨーロッパに行きたいなっていう風に思い始めていて。本当は卒業してからそのまま行きたかったんですけど、アメリカ生活の最後の最後で膝の怪我をしてしまったんです。その時点で1年間はサッカーできないっていうことが分かってたので、日本に帰ってリハビリ期間を過ごすことにしました。
日本では町田ゼルビアに所属しながらリハビリをさせてもらっていたのですが、入団する段階で、ゆくゆくは海外に行きたいですっていうことは伝えていました。(チームには)申し訳なかったんですけど、1年かけてリハビリをしてプレーできるようになってからドイツに挑戦しました。
サルウェブ:ヨーロッパの中でもドイツを選択した理由は何かありますか?
井上:本当はもっと日本人がいないようなマイナーな国に行きたい気持ちもあったんです(笑)例えばアイスランドとか。でももしそれが駄目だったらドイツにしようっていうのも考えていて。ドイツに興味をもったのはアメリカ時代にドイツ人の友達と仲良くなったのがきっかけですね。
2024年の1月頃にアイスランドのトライアウトだったので、2023年10~11月ぐらいからプランBとして「ドイツ留学」とか「ドイツサッカー エージェント」みたいな感じで検索したりし始めました。そこで今回お世話になっているWorld Football Connectionさんを知って、(アイスランドが)無理だったらここにお願いしようっていうのを事前に決めてましたね。
サルウェブ:ドイツのエージェントがたくさんいらっしゃる中でWorld Football Connectionさんにお願いした決め手は何かありますか?
井上:instagramとかも充実していて情報が多かったり、それこそ女子選手もサポートしているのがわかって。その子がJFAアカデミー出身ですごいレベルの高い子だったので、ちゃんとしているエージェントさんなのかなと。
正直、話す前まではサイトからとかしか情報がわからないじゃないですか。なのでそういう情報だけを見たときの最初の印象として良いかなと思ったところがWorld Football Connectionさんでした。そこから実際に話してみて決めたという感じです。
サルウェブ:実際にドイツへの渡航に方向性をシフトしてからはどのような流れで進んだのでしょうか?
井上:World Football Connectionさんに問い合わせてから渡航するまでが1ヶ月半ぐらいだったと思うんです。アイスランドのトライアウトの結果との兼ね合いで話を進めていたこともあって時間がなかったのですが、その中でもPV(ハイライト動画)など送ったりしてなんとか最初に所属するクラブを見つけてくださいました。本当にすごく短い期間だったんですけど、サポートが手厚かったので感謝しています。
ひとまず後期シーズンの間所属するクラブが見つかったので、その後については現地で7~8月以降所属するクラブを見ていけたら良いねという話で渡航しましたね。
私はアメリカに一度行っている分、海外慣れしているところもあったので、渡航前に特別取り組んだ準備などは正直ないですが、ドイツ語の挨拶とか簡単な文法くらいは少し勉強しました。
サルウェブ:そうなんですね。ちなみに日本人の女子選手で海外行かれる方が近年増えているように思いますが、実際いかがでしょうか?
井上:増えていると思いますね。特にオーストラリアとか周りでも多い印象です。私はアメリカに行った後英語圏には行きたくないと思ったのでヨーロッパを選択しましたけど、初めて海外にいく選手たちからしたら英語が使えて生活もしやすいのでオーストラリアは良いんじゃないかなと思いますね。
ヨーロッパの中ではスペインやドイツが多い気がします。去年まで町田ゼルビアで一緒にやっていた選手はスペイン2部あたりでプレーされてたりします。
ドイツのサッカーについて教えてください。
サルウェブ:そもそも、ドイツ女子サッカーのリーグ構成として、1部がプロリーグという認識で合いますか?
井上:そうですね。ただ1部であってもプロ契約ではない選手もいたり、同じリーグの中でもプロクラブもあればセミプロもあって、アマチュアもあるっていう感じですかね。そのあたりが男子リーグとちょっと違うかなっていうところですよね。
サルウェブ:最初の所属クラブとして、ドイツ3部のチームに入られたかと思います。レベルとしてはかなり高いのではないかと思いますがいかがでしたか?
井上:ドイツ女子サッカーのレベルとして、強いチームは強いですけど、結構同じリーグの中でも差があるという印象ですね。
私が入ったチームは普通に街クラブみたいな感じで、特に給料とかも発生しない契約でした。なのでサッカーでお金をもらうとかっていうことはなく、選手として所属していたという感じです。
今のチームではサッカーでもお金はもらいつつ、その他にもアルバイトをしています。
サルウェブ:最初に所属した3部のクラブから、現在の2部のクラブへ移籍した経緯は、トライアウトを受けたという流れでしょうか?
井上:そうですね。2回ほど練習に参加したんですけど、(クラブ側が)感覚がいいよって言ってくれたので移籍が決まりました。
1部リーグに所属するクラブのセカンドチームなので、ここからトップチームに上がれるという可能性もありますし、3部のクラブより良い環境でできるので良かったです。
サルウェブ:着実にステップアップされていますね!
具体的に、今いるドイツ2部や3部の環境は、体感で日本の女子リーグでいうとどれぐらいのレベル感に相当する印象ですか?
井上:なでしこリーグくらいじゃないかなと思います。私は実際にプレーしていた町田ゼルビアは関東リーグだったんですけど、その中でも上手な選手はこっちのリーグでも全然できると思います。全体的なレベルで言えばきっとなでしこリーグぐらいじゃないかなと。
ちなみにアメリカの大学院でやっていた時に所属していたところは関東リーグくらいかなと思います。本当に(チームのレベルが)ピンキリなので一概には言えないですけど。
サルウェブ:ドイツ1部・2部・3部など、それぞれ結構レベルの差があるものでしょうか?
井上:この間1部のチームと練習試合した時はそこまで差は感じなかったですね。でも先程も言っていた通り、3部の中とかだと結構所属するチームによってレベルが異なる部分はありますね。
サッカーに対する”考え方”の違いを実感
サルウェブ:では、ドイツのサッカーを経験してみて、これまでやってきた日本のサッカーとの違いを感じる部分は何かありますか?
井上:よく言われていることかもしれないんですけど、日本はやっぱり足元がすごく上手だし、テクニックはすごくあるなって思っています。
このあたりはアメリカも比較すると、アメリカは本当に(足元が)下手かなと感じます(笑)当然アメリカの中でもレベルは様々なので、私がやっていた環境がそこまでレベルが高くなかったのかもしれませんが。その代わりアメリカのサッカーはフィジカルがすごいですね。
これに対して、ドイツサッカーは(フィジカルもテクニックも)どっちもあるという感じ。若干フィジカルの方が優れているかもしれないですけど、足元も上手だし、フィジカルも強いという印象です。
日本とドイツの比較で言えば、日本は結構テクニックとか足元をちゃんと育ててからフィジカルをつける、みたいなイメージ。一方で、ドイツは最初から”サッカー”として捉えている。結果を求められる世界なので、雑なパスとかトラップとかそこは別に気にしなくて良くて、ただゴールが入ればいいとか、ボールが雑でも取れればいいとか。そういう考えがテクニックより先に育成の年代からあるんですよね。それで、後からテクニック的なところがくるみたいな。合ってるかわからないですが私のイメージです。
サルウェブ:なるほど。日本はすごく基礎を積みたがったり過程にこだわる部分があるけど、ドイツは過程が綺麗じゃなくても結果にこだわる、といった感じですね。そういった部分は普段チームでの練習の内容やプレーする中でも感じますか?
井上:そうですね。日本だったら注意されるだろうなっていうパスとかでも通ればOKで「あ、そこは何も言わないんだ。」とか思うシーンはありますね。そういう経験から、今は、サッカーに対する考え方というか価値観というか、変えなきゃなって思ってる段階ですかね。
特に、守備の勢いが違うかなと思っていて。日本は結構(相手に)”対応”するじゃないですか。ドイツの守備では突っ込んでくるというか、抜かれてもいいからどんどん行けみたいな感じなんですよね。 ”守る”と”奪う”バランスが日本とドイツでは違って、ドイツの人は”奪う”の方が強い。そういったところも現地のサッカーにシフトしていかなきゃいけないなと思っています。
サルウェブ:日本でやってきたものがドイツで強みになっていると感じる部分はありますか?
井上:守備の話でいうと、 チームの中では気が使える方だと思うので、カバーに回ることが結構多くて。抜かれてもいいからみたいな場面で実際に抜かれることとかたくさんあるんですけど、そういった時にカバーリングとか気を使いながらスペース埋めたりするプレーは強みかなと思います。
こうした部分もあって、日本ではサイドバックだった私がドイツではボランチやってるんですよ(笑)
日本にいる時はスピードがある方だったのでサイドバックをやっていたのですが、ドイツに来てからはスピードも結構違って。それでいうと、日本で通用したことがこっちでは通用しない、という厳しさを一番感じた部分がスピードかもしれないですね。
サルウェブ:なるほど。ここまでドイツでシーズンを戦ってみて、一番大変だったなと感じることは何でしょうか?
井上:言葉ですかね。もちろん、初めて海外に挑戦した人に比べたら、英語ができるアドバンテージはあったと思うのですが、大体のことは伝えられても、細かい部分のコミュニケーションは大変でしたね。
日常生活やプレーも、英語と簡単なドイツ語の単語でいける部分がありますが、一番困るのはミーティングの場面ですね。映像を見ながら みんなでミーティングする時に、ドイツ語でバーって喋られるのにはまだ苦戦してるって感じです(笑)後で英語で説明してくれればわかるんですけどそれも手間だなって思って。早くドイツ語もできるようにならなきゃって思います。
サルウェブ:逆に、ドイツの環境でサッカーをして良かったと思う部分や経験はありますか?
井上:そんなこと言ったらこの経験自体がプラスになってます(笑)私の中では海外に住みたいっていう思いが元々強かったので、”海外に来ている”、”ドイツに来てプレーをしている”ということ自体がプラスですね。夢見たいな生活してるなって感じです。
あとは、個人的にはドイツに渡る前にアメリカにチャレンジしたことがすごく大きいです。アメリカに行くときは外国に住む事自体初めてだったのですごく不安だったし、当時はすごく真面目だったので(笑)、頭で考えがちだったんですけど、アメリカでの経験から、楽観的になれたと思うんです。それが今ドイツでの生活とか新しい環境での生活ですごく活かされていると感じます。
海外に住んでいると自分でコントロールできないことが多すぎて、良い意味で諦めがつくというか(笑)。自分のコントロールできることだけに集中しようって思えるようになりましたね。
サルウェブ:そういった価値観や思考の変化というのはプレーにも現れていたりしますか?
井上:そうですね。サッカーに限らずですけど、全体的な自分への自信っていうのは結構ついてるかなと思っていて。
海外に住むと最初は、「自分ってこんなに無力で未熟だったっけ?」みたいに思うんですよね。電話一本かけるのも緊張したり、ちょっとしたことを質問することが怖かったり。日本だったら当たり前にできてたことが 環境が変わると そんなにできないなって思うことは最初は結構あるんです。
そういう無力で未熟な状態から、目の前の一歩一歩を積み重ねるっていう経験がすごく自信に繋がっているなと思います。
Q.ドイツでの生活について教えてください
サルウェブ:サッカーのお話から離れて、生活面のところをお伺いできればと思います。現在お住まいはどうされていますか?
井上:今はエージェントが用意してくれたアパートで、同じようにサッカーしにきている日本の留学生たちとシェアハウスみたいな形で住んでいます。
サルウェブ:生活のしやすさはどうでしょうか?
井上:ありがたいことに、困ってることは全然なくて。スーパーも近くにあるし、日本から調味料をたくさん持ってきたので、こっちにある食材で食事も作ってます。大学時代に一人暮らしもしていたので生活に関してはあまり困ってないです。日曜日にスーパーが開いてないことくらいですかね(笑)
サルウェブ:ちなみにこれだけは絶対に持っていくべきものなどは何かありますか?
井上:そうですね、食事関連でいうと、私が今重宝しているのはだしの素と鶏ガラスープの素ですかね(笑)アジアンスーパーとか行けばドイツでも買えるんでしょうけど、アジアンスーパー高いので。それ以外はあんまりないですね。
アメリカ時代の経験もあって、そのあたり結構大雑把になったところもあります。日本での生活と同じものを求めないというか。食事に関してはちゃんと取りたいですけど、それ以外は別にという感じです。
サルウェブ:なるほど。スケジュール的にはどのように過ごされていますか?
井上:平日は火曜日以外基本練習が夕方からあって、試合が基本日曜日という感じです。それ以外の時間でバイトが入ってる時はバイトに行くという感じです。
サルウェブ:バイトも練習もない自分の時間もありますか?
井上:バイトさえいれなければ自分で休みは作れますね。ただあんまり 暇すぎるのも好きじゃなくて、忙しくしてる方がわりと好きなので予定は結構入れるようにしてます。一人でちょっと日帰り旅行に行ったりとかもしますね。
サルウェブ:すごい!いいですね。治安の面で不安に思ったことなどはありますか?
井上:住んでる地域は大丈夫です。都心の駅の方に行くと治安が悪いところがあるとは言われてるんですけど、自分自身が怖い思いしたことはなくて、必要最低限 気を付けてれば問題なく過ごせます。堂々と歩いていれば大丈夫です(笑)アジアの見た目だから、観光客っぽい行動をしてると狙われるんですよ。だから何よりも堂々とすることが大事ですね(笑)
サルウェブ:ドイツの方の人柄はどうですか?
井上:ドイツ人は優しくてフレンドリーな方が多いですね。アメリカ人の方がもっとフレンドリーですけど(笑)日本人は礼儀正しくて丁寧だけど、フレンドリーさで行ったらちょっと冷たい感じ。比較するとそんな印象です。
サッカーをやめた後とか、最終的には日本に住みたいとは思ってるんですけど、このフレンドリーさで行ったらアメリカ・ドイツは私は結構好きな環境ですね。
サルウェブ:生活していく中でエージェントさんとのやり取りも結構ありますか?
井上:困ったことがあれば連絡を取る感じです。最初の方は練習会場まで連れてってくれたり、ビザの手続きとかをサポートをしてくださいました。渡航して一番最初の頃が一番やり取りさせてもらいましたね。サポートはしてもらいつつ、自分でできることはやらせてもらえる感じで、関係性としても良いと思います。
Q.今後の目標について教えてください
サルウェブ:今後について、目標など何か考えていることはありますか?
井上:今までずっと別に上を目指してきたわけではなくて楽しいから続けてきたし、海外に住むことの手段としてサッカーができるならしようっていう感じだったんですけど、ありがたいことに結構大きいクラブに今入ることができたので、今いる2軍のチームから来シーズンにはトップチームに上がれたら良いなと思っています。
ただ今のクラブのトップチームはドイツ1部の中でも結構上の方なので。仮にトップチームへ上がることが無理だったとしても、自分自身が1部のクラブにステップアップできたら良いなというのは思いますね。
さらにもう少し大きなことを言えば、今ワーキングホリデービザで滞在しているんですが、サッカーで就労ビザをおろしてもらえるくらいチームから必要とされる選手になれたら良いなと思ってます。
サルウェブ:ありがとうございます。ちなみに、もっと長期的に見た時に、サッカーを抜きにしても海外で生活することを続けて行きたいという気持ちはありますか?
井上:そうですね。さっきいずれは日本って言ったんですけど、生活できるうちは海外にいたいなと思っています。20代のうちは、サッカーやりたければ続けて、海外に住みたければどんな手段を使ってでもそうできれば良いかなって思っています。今は結構ドイツが好きなので、まだ具体的ではないですけど、ドイツ以外の国も、自分が行きたいと思ったら全然ありだと思いますね。
Q.これから海外に挑戦する選手たちにメッセージをお願いします
サルウェブ:これまでの経験を通して、これから海外挑戦を考えている選手たちに向けて何かメッセージやアドバイスはありますか?
井上:一つは、細かいことは気にせず行きたいなら行けばいいっていうことです。
行ってみないとわからないことってたくさんあるし、行きたいって気持ちがあるならその気持ちだけで充分というか。
私もアメリカ行った時とか、今更アメリカ行って何するの?とか言われたり、自分でそう思っちゃったり不安もあったんですけど、思い切って行ってみたら全然行って良かったなってすごく思いましたし、自分が思った悩みとか心配なんて本当に大したことないなっていう実感したんですよね。なので結局、行きたいっていう気持ちだけで本当に充分だなって思っています。
目的とか、やりたいこととかも大事だけど、そういうことを考える前に来ちゃった方がいいと思います。
井上:あと、言葉は絶対勉強した方が良いです。正直英語にかなり助けられてるので。英語ができるからある程度自信もあるだろうし。言語は学んで損することは無いと思いますね。
サルウェブ:ありがとうございます。ちなみにセカンドキャリアについてなども当時悩まれたりはしましたか?
井上:そうですね、 悩みましたし、今もたまにどうしようって思うこととかは正直あります。けど、そんな先のこと考えてもしょうがないから、本当に今をちゃんと大事に生きた方が良いなっていう気持ちです。もちろんどっちもありますけどね、セカンドキャリアをしっかり考えた方がいいっていうのも一つだし、間違いではないと思います。でもそれよりも今をもっと大切にした方がいいなっていう風に私は思ってます。
サルウェブ:貴重なお話をありがとうございました!