File9. 辻野 翔太/Shota Tsujino

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本インタビューについて

イギリスへの短期留学を経験された辻野 翔太さんとの対談です。(以下、敬称略)海外挑戦をサポートしたエージェントはKens Sports & Educationさんです。(以下、KensSE)

プロフィール紹介

◯名前:辻野 翔太(Shota Tsujino)
◯出身:大阪府堺市
◯所属クラブ:
→ FFC.セレゾン
→ 同志社香里中学校
→ 同志社香里高等学校
→ F.S compagnon

※短期留学中の所属チーム:Waltham Abbey FC(イギリス8部)/練習参加団体:jusball

Q. 辻野選手のサッカー歴と海外挑戦をした理由を教えてください。

辻野:小学校の時はFCセブンというクラブチームに所属し、中高は同志社香里高校でプレー。高校1年生の時には大阪の地学選抜にも選ばれました。
大学に入ってからは大阪府の社会人リーグ2部のチームに入って、1年目で一部昇格を経験。現在も同チームに所属していて、今年で3年目になります。

サルウェブ:サッカー留学にはいつ頃行かれたのですか?

辻野:大学2年生の春休みにイギリスのロンドンに行きました。

サルウェブ:サッカー留学をしたいという思いはいつからあったのでしょうか?

辻野:通っている高校の留学プロジェクトで、高校2年生の時にイギリスに行く機会があったことがきっかけの一つです。あとは、当時からプレミアリーグが好きだったので、元々イギリスでサッカーをすることに興味は持っていました。

イギリスでサッカーをするという話が具体的になったのは、大学生になって社会人チームでプレーをし始めてからです。
高校を卒業して、初めは体育会のサッカー部に入ることも考えたのですが、キャンパスが違かったり、怪我もしていたので断念したんです。それで社会人リーグでプレーすることを選びました。
チームには自分よりもすごい経歴の選手もいる中で、1年目から得点王になれたり、「意外と自分もやれるんだ」という自信が持てて。

サッカーを通じて、元々興味のあったイギリスで経験を積みたいと思い、留学することを決断しました。

Q. 海外挑戦に至るまでの経緯について教えてください。

サルウェブ:「イギリスにサッカー留学したい」と思われてから、実際に行動した最初の一歩は何でしたか?

辻野:サッカーではないのですが、友達が短期の語学留学でイギリスに行っていたので、自分はそれをサッカーでやりたいなと思いました。まずはインターネットで「サッカー 留学」で調べていったという感じです。
他の語学留学とは違ってサッカー留学はあまりメジャーではないので、情報がなかなか見つからなかったのですが、だからこそ自分で調べるようにしました。

サルウェブ:サポートを依頼するエージェントを決める際に、迷ったポイントや特に気にかけていたポイントはありましたか?

辻野「費用」と「現地でのサポート」について具体的にどのような提案をしてくれるのかという部分ですね。あとは英語が全くできなかったので、その点でどれだけフォローしていただけるかという点は気にしていました。

ただ、正直とにかく行きたいという気持ちが強かったので、エージェントさんに対して特別過剰に気にしたという点はなかったと思います。

サルウェブ:なるほど。最終的にKensSEさんに決められたかと思うのですが、決め手となった理由はありましたか?

辻野:実はKensSEの代表の弟さんが自分の高校と繋がりがあって。学校の先生方も知っている方だったんです。そういった点での縁も感じましたし、何より親切で、安心できたのでKensSEさんに決めました。

英語より用具?現地では調達できないものも

サルウェブ:KensSEさんと契約されてから、渡航までの期間はどれぐらいかかりましたか?

辻野:本当は大学2年生の夏に行く予定だったので、春くらいから準備はしていたんです。ただ怪我やコロナの影響で計画が変更されてしまって、結局渡航までは1年くらいかかりました。

サルウェブ:そうだったんですね。渡航前の準備として具体的に何をしましたか?

辻野:具体的な準備は渡航の1ヶ月前くらいから始めました。イギリスは天然芝のグラウンドが多いので、取替式のスパイクを買ったり、テーピングも多めに準備しました。他にはビザの取得とか、英語の勉強・リスニングの練習とか。あとはホームステイ先の方へのお土産も準備しましたね。

サルウェブ:日本から持っていって良かったアイテムはありますか?

辻野:堅いストレッチボールやコンパクトなマッサージガンは持っていってよかったです。

ただスパイクに関しては、新品のものをちゃんと持って行けばよかったなと思います。2足持って行ったうちの片方が結構使っていたスパイクだったので。

現地で買うつもりだったのですが、ミズノやアシックスといった日本製のスパイクが現地で売っていませんでした。

サルウェブ:現地で調達できないものもあるんですね。英語の勉強もされていたようですが、具体的にはどれぐらい準備しましたか?

辻野:ほとんどしていませんでした(笑)その中でも、リスニングはある程度勉強しようと思って、YouTubeで空いている時間に英語の動画を聞いたりしてましたが、それくらいです。

正直2ヶ月だしなんとかなるだろうと思ってました。実際にすごく苦労したことはなかったんですけど、(現地で)友達ができた時に、予めもっと文法や語彙の勉強をしていたら、もっと深い会話ができたかもしれないなと感じました。表面的な会話はできたのですが、もう少し自分の英語力があれば、もっと友達になれただろうなと。

Q.イギリスのサッカーについて教えてください。

辻野:ホームステイで滞在しながら、現地で受け入れてもらえるチームに練習参加をしました。
(自分と)同じような状況の日本人がいたので、彼らから色々と教えてもらいながら過ごしましたね。

サルウェブ:練習参加したチームのレベルや印象はいかがでしたか?

辻野:レベルは高かったです。特にシュートの意識が強くて。シュートに持っていくまでの過程はそこまで上手ではないのに、シュートだけ強くて上手だった印象があります。日本の練習ではなかなか経験できないプレーが多くありました。

サルウェブ:その違いは体格などの違いによるものが大きいのでしょうか?

辻野:そうですね、体格はかなり大きくて、185cm超えの選手がたくさんました。

自分は色々なチームから選手が参加しているクリニックのようなところに参加していたので、同年代のセミプロの選手たちもいたんです。(セミプロの選手たちと)当たると、全然勝てないなという感覚がありました。

サルウェブ:先ほど、”過程の部分はそこまで技術が高くない”と仰っていましたが、それはセミプロの選手も同じ印象ですか?

辻野:上手な人はやはり上手でしたけど、日本人とは違っていたと思います。

日本人の上手な選手って全てのプレーが綺麗で技術が高い感じだと思うんですが、向こうの人は上手で綺麗にプレーできる選手でも、強引さも兼ね備えている。特に、最後のゴール前の局面はすごく力強かったイメージです。
日本人が”練習中は上手い”と言われるのは、こういうところの違いがあるのではないかと思います。

サルウェブ:ここぞというところの強さは、断然イギリスの方が抜きん出ているといったイメージでしょうか?

辻野:そうですね。結局(イギリスの選手は)試合でしっかり点を決めますし。試合を想定して常に練習しているのだと思います。

辻野:あと、イギリスの人は日本人よりも、”自分の型”を持ってる選手が多いイメージがありますね。「この角度で強引にいって、足を振り抜いて、ここのコースに決める」みたいな。
相手にも(狙いが)バレているのに、強引に持って行って最後はしっかり決めてしまうというプレーも多かったです。

それから、シュートへの意識の高さも大きく違ったと思います。試合形式の練習が多かったのですが、その中で、自分は引きつけてパスを出してアシストするようなプレーが多かったんです。でもそれに対して味方の選手は、「パスしないで自分で打てよ」という雰囲気で。そういうシュートへの意識の高さにズレみたいなものは感じました。

海外に飛び出したからこそ気づく”自己主張”の大切さ

サルウェブ:日本とはかなり異なる環境でのプレーだったかと思うのですが、その中でも通用したなと感じる点はありましたか?

辻野:スピードやサイドでのドリブルですね。長い距離を直線で走ったら僕より速い選手はたくさんいましたが、向こうの選手は大きいからか、サイドの緩急つけた細かい動きやドリブルに関しては通用したなと思います。

サルウェブ:なるほど。反対に現地で気がついた自分の課題や、成長した点はありますか?

辻野:フィジカル面は伸ばしようがあると感じました。とはいえ限界はありますし、(フィジカルで)勝つのは難しいかなと思います。それを踏まえると、シュートの質や意識の部分が課題かなと思います。実際に、現地で最も成長したのは”メンタル”だと思います。

サルウェブ:”メンタル”というと具体的にどういった点でしょうか?

辻野:参加していたクリニックには、日本人が自分含めて3人いたのですが、自分が(イギリスに)着くのが一番早くて、最初は1人で練習に参加していました。そのクリニックが、頭を使うようなトレーニングを行うところで、日本語でも難しいような内容が英語で指示されていたのでよく理解できず、頻繁に練習を止めてしまって。順番を抜かされたり、ボールをもらえなかったりもしたので、結構精神的に参ってしまったというのは正直ありました。

ただその後、チームメイトとご飯に行ったりコミュニケーションをとる中で徐々にボールをもらえるようになって、思い切ってシュートを打って入ったら一緒にすごく喜んでくれたりして。徐々に馴染めるようになっていきました。

最初順番を抜かされていたりした時も、嫌がらせで抜かされていた訳ではなくて、当たり前のように自己主張が強いというだけだったんですよね。なので、そういった時でも物怖じせずに、どれだけ自分を出していけるかが重要だなと学びました。

サルウェブ:かなりその期間を経て成長されたのが伺えます。

辻野:そうですね。ただ、現地で試合に出る機会があまり多くなかったので、感じたことを実際に試合で試すことができなかったのは、少し消化不良な部分ですね。

Q.ホームステイ先での生活について教えてください。

サルウェブ:現地でのスケジュールはどのような感じだったのでしょうか?

辻野:月曜日〜木曜日の8時から10時ぐらいまで朝練があって、午後からは語学学校に通ってました。土日は呼ばれたら試合があるという感じでした。

サルウェブ:試合に呼ばれないこともあるのでしょうか?

辻野:もう、全然呼ばれないですね。自分よりもっと上手な日本人選手もいたんですけど、彼も呼ばれてなかったので、セミプロクラブのU23カテゴリーにもなると、能力がかなり高くないと試合には絡めないのだと思います。

あとそのチームが途中でオフ期間に入って活動がなくなってしまったので土日は結構空いていました。サッカーがしたくなった時は、エージェントさんに紹介してもらった現地の社会人チームに参加していました。

サルウェブ:チーム状況にも左右されてしまう感じですね。ホームステイ先はいかがでしたか?

辻野:ジャマイカ系の老夫婦の家にホームステイしました。家はすごく綺麗で広くて、(ご夫婦も)とても優しかったです。

サルウェブ:食事なども全部面倒を見てもらえるのでしょうか?

辻野:自分のホームステイ先はそうでした。ただ、他のところに泊まっている日本人の子は、ホストファミリーの対応が悪いと言っていたので、各家庭それぞれ違いがあるのだと思います。

最初は日本人と台湾人の女性と同じ階に住んでいましたが、途中で部屋のメンバーが変わり、最後はブラジル人とイタリア人の男性が来ていました。

”サッカーが生活に根付いている”ことを実感

サルウェブ:現地の生活でギャップを感じたところは何かありましたか?

辻野:苦労した点でいうと、洗濯機が1週間に1回しか使えなかったことです。他の子は語学留学だったので十分足りていたんですけど、自分はサッカー留学だったので週1回では足りなくて。交渉して週に2回使わせてもらえるようになりました。

あと、遊べるところがないのは日本と違うなと思いました。アミューズメント施設とかがなくて、(現地の人は)スポーツを見るためにパブに集まるだけと言う感じで。

そういう意味でも、これはサッカー強くなるなと感じました。スタジアムに行っても、イギリスでは僕と近い年代の女性とか家族ぐるみで応援している人がいて、サッカーが生活の一部として根付いているなというのをすごく感じました。

サルウェブ:それはすごく良い環境ですね。今仰っていたような洗濯の件など、ホームステイ先での困りごとに関しては全て自分で解決していたのでしょうか?

辻野:そうですね。ただエージェントの方がすごく親切で、週に1度くらいはLINE等で「最近どう?」とか、「ご飯食べに行こう」とか、頻繁に連絡をくれて。そこで相談できたのが大きかったです。

サルウェブ:なるほど、エージェントさんとの距離が近いんですね。他にも何かエージェントさんに現地で助けてもらった事や、サポートしてもらったことはありますか?

辻野:初回はグラウンドまで一緒について来てもらいましたし、2つ目のチームに行く時も、グラウンドがすごく遠くて、電車を乗り継いで1時間半ぐらいかかったんですが、そこにも一緒に行ってくれました。

他には、初めて空港からホームステイ先の家に行く時にも一緒に来てもらって、ホストファミリーとのやり取りを進めてくれたり、自分と繋いでくれたりしたので、すごく助けられました。

未だにこまめに連絡をくれて気にかけてくれますし、すごく近い関係性を築けているかなと思います。

Q.サッカー留学を経て変化した点を教えてください。

サルウェブ:留学の経験を通して、変わったなと思うことは何かありますか?

辻野:本当に全部が初めてのことだったので、サッカーを通じて留学という挑戦ができたのはすごく良かったと思います。

実は1週目がめちゃくちゃ悲惨で。初日にホームステイ先にいた子がコロナになってしまい、僕も感染ってしまったんです。渡航して2日目から練習に行ったんですけど、ちょうどその2日目の夜から体調が悪くなってしまって。熱も39℃ぐらいまで上がった状態でした。しかもWi-Fiもあまり使えなかったので、親とか誰とも連絡が取れなくて。その上に虫歯も重なったんです。

エージェントさんにもホストファミリーとやり取りしてもらって、Wi-Fiを直してもらおうとしたのですが結局すぐには直らないとのことで、3日目に40分ぐらいかけて携帯ストアに行きました。拙い英語でどうにかしてWi-Fiがなくても使えるようにしてもらって。
そのあとはエージェントさんの手も借りながら日本の看護師さんがいる歯医者を見つけて予約して、、みたいな感じでした。

なので、メンタル面は結構強くなったと思います(笑)

サルウェブ:それは壮絶でしたね。

辻野:そうなんです。逆に1週目が一番辛かったので、もうこれ以上はないだろうと思えました。

サルウェブ:まさに、”生き抜く力”が鍛えられていますね。プレー面では、留学の経験を活かせていることや変化はありますか?

辻野:イギリスに行く前からサイドで勝負させてもらうことが多かったので、プレースタイルは変わってはいないんですが、「ボールを持ったら勝負しよう」、「多少強引でも点を取ろう」という気持ちがより強くなりました。

一番経験が活きているところはやはりメンタルですね。
これまでだと、削られてもファールを取ってくれなかったような時に萎えちゃうこともあったんですけど、そういうシーンでも精神的にブレなくなったと思います。

Q.今後のキャリアについて教えてください。

サルウェブ:今後のキャリアについて伺いたいのですが、何か現時点でのプランや目標はありますか?

辻野:サッカーでいうと、今大阪府社会人サッカーリーグの1部で戦っているのですが、まずはそこで昇格したいというのが今の一番近い目標です。

サルウェブ:また海外に行きたいという気持ちはありますか?

辻野:あります。できれば半年以上いきたいなとは思ってます。

理想をいえばサッカーもしたいんですが、どちらかというと、”もっと海外の文化に触れたい”という気持ちが強いので、そういう意味では例えばカナダとかは興味があります。
あとはイギリスもやっぱり好きなので、また行きたい気持ちがあります。ご飯だけ、ちょっとアレなんですけど(笑)

他の国を知ることで日本のことをこれまでにない視点で知ることができる点も良いなと思います。

自分だけの”学チカ”を作る

サルウェブ:最後に、これから海外に挑戦してみたいと思っている選手たちになにか伝えたいことはありますか?

辻野:僕と同じタイミングで、15歳で東福岡高校から特待生をもらった選手が渡航していたんですが、その選手が「将来プロになるために早めに海外を経験しにきた」と言っていたのが印象的で。多くのプロ選手が海外に行ってますし、プロになるのが目標であればなおさら、どんどん留学という機会で海外でのプレーを経験した方が良いなと思います。

また、プロになるという目的ではなくても、いわゆる語学留学のような一般的な留学とはまた違う、”サッカー留学”だからこそ感じられることがあると思います。自分は実際にそうだったので、挑戦する価値はあるなと。

特に、就職活動の際に重要となる”学チカ(学生時代に力を入れていたこと)”として、サッカー留学はすごく良いなと思います。
留学をしている人も、(国内で)サッカーを頑張っている人もそれぞれいると思うんですが、それをどっちもやっている人は少ないと思うので。

あとは、サッカー留学を通じて、今までにしたことがないような経験ができたり、それを経て大きく成長もできると思います。
そういった部分も、就職活動ですごく活きるんじゃないかなと思います。

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