File3. 千葉望愛/Minori Chiba

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本インタビューについて

現在スペインでサッカー選手として約7年間プレーしている千葉望愛さんとの対談です。(以下、敬称略)

プロフィール紹介

◯名前:千葉望愛(Minori Chiba)

◯所属クラブ:浦和レッドダイヤモンズ・ジュニアユースレディース
⇨ 早稲田大学ア式蹴球部女子
⇨ 浦和レッドダイヤモンズレディース
⇨ CD Transportes Alcaine(スペイン)
⇨ Zaragoza Club de Fútbol Femenino(スペイン)
⇨ Málaga Club de Fútbol Femenino(スペイン)
⇨ Córdoba CF Femenino (スペイン)

Q. 千葉選手のサッカーの経歴を教えてください。

千葉:サッカーを始めたのは8歳ぐらいで、小学校の間は地元の少年団でやっていました。

中学校に上がるタイミングで女子サッカーっていうものを知って、浦和レッズレディースのユースチーム(当時レイニータ)に入りました。

高校卒業時、トップチームに上がることができなかったので、その後は当時強かった早稲田大学で4年間プレー。大学卒業後は、海外に行くことも考えていたんですけど、特にツテもないしお金の問題もあるしと思って諦めて、なでしこリーグにトライしました。が、あまり試合に出られなくて。

サッカーをやめようかなとも思っていた時に、運よく、大学のサッカー部の先輩でスペインで働いている方から「スペイン来るなら手伝うよ」と声をかけていただいたんです。

もうこれは行くしかないと思って。「行きます」と返事をしてからトライアウトに参加して、チームからも無事OKをもらえたので、手続きをしてスペインに渡りました。現在はスペインに来て、もうすぐ7年目になります。

「できるならサッカーで、日本以外の国に住んでみたかった」

サルウェブ:(海外挑戦にあたって)スペインという国にこだわりはあったのでしょうか?

千葉:スペインっていうこだわりはありませんでした。

とりあえず、日本じゃないところに住んでみたいっていうのがあったので、サッカーがきっかけじゃなくても良かったんですけど。やっぱりサッカーを使ってしか行く方法がないなって思って。

サッカーを辞める前に、できるならサッカーで海外に行きたいなあっていう。なのでたまたまスペインだった感じですね。

サルウェブ:海外に行きたくなったきっかけは?また、当時サッカーで海外挑戦をするといった時の周囲の反応はどうでしたか?

千葉:私が中学生の時、初めて女子の世代別の代表ができたんです。

それまでA代表はあったけれど、U−17とかU-15とかっていう代表がなくて。そこで、まだそんなに人口も少なかったので私はその代表に選ばれて、初めて海外に行ったんです。

その時に本当にもうインスピレーションを受けたというか「海外住んでみたい!」って思ったんです。

海外に行くと、なんか違う自分になったみたいな感じになって、遠征に行く度に「海外いいなあ」と思っていましたね。

そうやって、海外に行きたいとよく言っていたのもあったし、なんか私はどっちかっていうと日本に居るとちょっと変わってる人だったので、実際に海外挑戦すると言った時もあんまりそんなみんなに驚かれなかったです。(笑)

Q. 日本とスペインのサッカーの違いについて教えてください。

サルウェブ:日本の女子サッカーのレベルは、世界的に見ても高い水準にあります。当時、実際に日本の代表として海外で戦っていく中で、日本の女子サッカーと海外の女子サッカーで違いを感じる部分はありましたか?

千葉:そうですね、当時、私が高校生とかでほかの海外のチームと戦った時は、正直言って(海外の選手が)上手とかって思うことは少なかったですし、日本の子たちの方が全然上手だなって言うのは当時すごい感じましたね

フランスとか、今ではすごい強いですけど、その当時はもう全然私たちの方が格上と言うか、もう全然(私たちのほうが)強いっていう感じ。

アメリカとかイングランドはやっぱり強かったんですけど、他の国はそんなに強くないなっていう印象でした。

でも実際に今、私がスペインに渡ってプレーしていると、"個人"としての技術はそこまで無いように見えても"チーム"として機能しているというか、試合で力を発揮できているというのをすごく感じます

海外へ渡ってから感じた日本とスペインの「練習内容」の違い

サルウェブ:練習環境や練習メニューは、日本とスペインで違いはありますか?

千葉:日本では練習が始まるまでに、100%でプレーできるように体を作っておくみたいな環境だったんですけど、スペインだと最初のアップからみんなでやって練習に入っていくという感じでした。

あとは、日本だとだいたい試合の翌日が休みだったんですが、スペインではたまに試合の前日が休みだったりして。最初はすごい戸惑いました。試合の前日が休みって、まあソワソワしました。

サルウェブ:スペインでプレーしている男子選手からは「スペインのほうが試合局面を意識した練習が多い」などといった話をよく聞きますが、その辺りはいかがでしょうか?

千葉: それは私もすごく思います。

試合相手によって、週の中で今日はアタックゾーンの守備の練習、今日は攻撃の練習といったように、局面を意識した練習を組んでやったりしますね。

日本は練習で体を酷使する印象ですが、スペインでは頭を使うという印象です。なので、最初の頃は不安に感じて休みの日にランニングしたりもしていました。

サルウェブ:語学面での苦労はやはりあったのでしょうか?

千葉:語学は本当に今でも大変で、ちょっとしたニュアンスで全然意味が変わってきちゃって、勘違いしてしまう事もよくあります。

でも多分、雰囲気を読むみたいな力が日本人はすごく優れているので、監督の手振り身振りとか、マーカーの置いている感じとかで、次はこんな練習だろうなみたいなのが、なんとなく分かるんです。それでまあ一回見ればなんとなく理解できています。

逆にチームメイトから、「ミノリ、この練習一番先にやって」とか言われたりしていました。(笑)

自分の頭の中でなんとなくイメージしてやったり、意図を読み取る力みたいなものは、自分の中でもすごいなと思うし、きっと日本の人はそういう能力が優れているんだと思います。

Q. スペインに渡航をする前と後で、プレースタイルに変化はありましたか?

サルウェブ:日本に居た頃とスペインに渡ってからとで、千葉選手のプレースタイルに変化はありましたか?

千葉:かなり変わったと思います。

私の場合、日本に居た頃にずっとやっていたセンターバックから、サイドバックにポジションが変わったというのもあるんですけど。

サルウェブ:サイドバックにコンバートした理由は何だったのでしょうか?

千葉:「攻撃にもっと絡みたい」という理由で、元々サイドバックをやりたいと思っていました。また、言語の問題もあってセンターバックだと指示も出せないし、身長もそんなに大きくなかったので監督とも話してサイドバックになりました

日本に居た時はワンタッチ、ツータッチでなるべくボールを早くさばくようなプレーを要求されることが多くて、自分勝手なドリブルとかをしたら怒られるみたいな感じだったんでした。

ただ、スペインで同様のプレーをした時に、「自分の前にスペースを持っているのになんで自分で運ばないんだ」とか「スペースを使って運ぶとかっていう選択を自分でしなさい」とすごく怒られました

それまではディフェンダーがドリブルで運ぶとか考えられなかったんですけど、スペインで指導を受けてから「自分でもボールを運んで良いんだ」と当時気付かされたというか、なるほどと思いました。

スペインでは、「奪いに行かなければデイフェンスをしているとは言えない」

サルウェブ:他にも、スペインでプレーしていく中で思考が変わった部分はありますか?

千葉:あります。

例えば守備的な部分でいうと、日本にいたときは、自分が抜かれたくないとか、ミスしたくないみたいな気持ちが強かったので、間合いをとって遅らせて、シュートブロックだけできればいいかなみたいな考えだったんです。

けれど、スペインでそれをしていたら「ディフェンスになってない」って言われましたね

「奪いに行かないとディフェンスしている意味が無い。前に行ってダメだったら後ろがいるんだから、ミスを恐れないで自分が奪う勢いで行けばいい。そのために11人いるし、そういうスポーツだから」と言われた時に、確かになと思ったんです。

それからは自分のミスを恐れるみたいなことが無くなって、チームのためにというような考えが強くなりました。こういう考え方のほうが自分には合っているなと思っています。

Q. 千葉選手の今後の展望について教えてください。

千葉:やっとスペイン語も分かってきて、みんなとコミュニケーションが取れるようになってきたことでもっと楽しくなり始めているので、このままスペインであと1~2年やって楽しいって感じで終わりたいなって思っています。

去年ぐらいまでは、もう一度スペイン1部でプレーしたいなと思っていたんですけど、スペインのレベルがめちゃくちゃ上がってきていて。ちょっともう自分の実力的に1部ではできないなって思いました。

なので、(上を目指すというよりかは)今のチームでスペインのサッカーを楽しみたいと思っています。

サルウェブ:千葉選手自身の数年後については、どのようにお考えですか?

千葉:私的には、もうサッカーとは関係なく、このままスペイン住みたいなと思っています。

私、スペインに来て1年目に骨折してしまって手術をしたのですが、その時のチームメイトがすごく良い人達で。当時、私は言語が本当に分からない状態だったので、入院していた時に毎日2人ずつチームメイトが交代で泊まってくれたんです。なので、入院している最中に私は一回も病院で一人にならなかった。

常に一緒に居てくれて、医者の話も聞いてくれたり、何かあったら全部話を聞いてくれました。チームメイトのお母さんとかも毎日来て面倒を見てくれたし、退院後の受診も予約をしてくれたり手伝ってくれて。

もう、本当にめっちゃ良い人達!って思いました。日本ではあまり経験したことのなかった、人の優しさみたいなものを感じてすごく感動したんです。

スペインの人からすると、そうやって助けることがきっと当たり前なんですよね。そういう部分がすごく好きだし、とても魅力を感じています。

Q. 千葉選手を中心に主催されているサッカーイベント「PROTAGONISTA(プロタゴニスタ)」について教えてください。

千葉:きっかけはコロナウイルスが流行る前だったんですけど、当時スペインでプレーしている日本の女子選手が14人くらいいて「1チーム作れるね」みたいな話をしていたんです。

そこから、「スペイン組となでしこチームで試合したら面白そうじゃない?」という話が出て、すごく良いなと思ったのがきっかけです。

元々、海外でプレーしている女子選手のプレーや活躍を日本の皆さんに観てもらうという機会がなかなか無くて、大変さもありながら頑張っている姿を観てもらえなかったり、知ってもらえない事が悲しいなと思っていました

オフのタイミングで帰国するとみんな時期が一緒なので、集まって試合をすればプレーを観てもらったり、こんな選手が居るんだと知ってもらえる機会が作れると思ったので、もうやるしかないなという感じで始めました。

あとは、日本に居た頃ってどこの国にどういうチームがあるかとか、海外の情報が全然分からなかったんです。

なので、こういうイベントを日本で開催することによって、そういった海外の情報を知るきっかけになったり、海外挑戦という選択肢を広げられたら良いなという思いもあります。

コロナの影響もあってなかなか思うように進まない部分もありましたが、現在も継続して活動しています。ユニフォームやグッズの販売をしたり、Twitterやnoteで情報発信しているので見て頂けると嬉しいです。

※PROTAGONISTA(プロタゴニスタ)は、2022年6月19日(日)に無事開催が終了。

Q. 最後に、日本の若い女子選手で海外挑戦を考えている選手に向けてメッセージをいただきたいです。

千葉:もう、絶対海外挑戦した方がいいと思います。サッカーだけじゃなくて、人として成長できると思うんです。

日本に居ると、コンビニ行ったりとか、普通に街を歩いたりとか、当たり前じゃないですか。でも海外に行ったら、買い物に行くっていうだけでドキドキするんです。

日本みたいに出来上がったものが売っていなかったり、便利じゃない部分がたくさんあったりするし、料理をするにも、台所の作りとかが結構違ったりもして。お米を鍋で炊いたり、みりんって何からできてるんだろうって調べたり。(笑)

海外へ行くと、日本に居たらできないような経験がたくさんできます。私自身そういう経験をする事が結構好きだし、海外に来たことで人間力が上がったなと実感しているので。

どうしても金銭面で厳しい部分があったりすると思うんですけど、お金の問題を乗り越えて行くだけの価値はあると思っています。昔と比べて以前より海外挑戦の敷居は下がっているし、海外を目指すことは誰でもできます

サッカー選手として自分の名前を知ってもらうには、まずはプレーを観てもらうことが必要です。海外が合う合わないも含めて、実際に行ってみる事や、対面で会って言葉を交わすことが大切だと思います。

今はスペインリーグの試合も結構見ることができますし、ぜひチェックしてみてください。海外挑戦が(日本の女子選手たちの)一つの選択肢として広がっていくと良いなと思います。

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